4.パリのわんこたち
jeudi 15 mai 2003, Paris / vendredi 16 mai 2003, Tokio up

パリの街を歩いていると、
犬を連れている人を、とてもよく見かける。
公園はもちろん、メトロやカフェ、お店の中でも、
飼い主のそばにくっついて入ってくる。
大きな犬でも鎖につながずに散歩していたりする。
本当は、メトロに犬を連れて入ってはいけないという、
決まりはあるらしいけど、みんな気にしていないようだ。
犬を連れて入ったからといって、
文句を言われることもそうそうないのかな?
それか、言われても気にしないだけなのかも。
それを言うなら、アパートもそう。
「動物はお断りします」なんて大家さんはいないのかと、ふと疑問になる。
言われても気にしないだけなのか、これもよくわからないけど、
とにかく、「花の都パリ」と言うより、
「犬の都パリ」という言葉ができそうなくらい、
犬を飼っている人が多いと思う。

シーズー、プードル、ヨークシャー・テリアは定番で、
街を歩いていると、すぐに出会うことができる。
それと、もうひとつ、
ジャックラッセル・テリアという犬を、皆さんはご存知だろうか。
小型犬で、短毛、白と茶色のぶちがあり、顔が長い。
私はパリに来てから初めて知ったが、気になるくらいよく出会う。
今パリでブレイク中?
ペット屋さんでも、この犬種の子犬がわんさかいる。
おとなしくて、賢そうだ。

私は犬が大好きなので、「犬の都」でも別に迷惑だとは思わない。
微笑ましく感じるし、写真を撮りたくなってしまう。
実際、たいていの犬はとても賢くて、
よく飼い主の言うことを聞いて、おとなしくしている。
カフェで足を組みながらおしゃべりに興じる、
マドモワゼルの足元で、大きな犬がゆったりとくつろいで寝そべっている・・
というようなシーンを、写真やテレビで見たことがある人も多いのではないかな。
ああ、優雅だな〜パリとカフェと大きなわんこ〜
・・・なんてのんきに思ってるけど、よくよくわんこたちを観察してみると・・?!

「ちょっと、ねぇ、飼い主さん、もう少し私に気を配ってちょうーだい。
この前、お風呂に入れてもらったのはいつだったっけ?
お散歩の途中で会う、お友達のシーズーちゃんもどろどろだし、
プードルちゃんも、白が薄汚れてきちゃないし、私も臭くないかしら?
でね、私のこと見ないで、鎖でずるずる引きずるの、やめてちょうだいな。
あたたた・・足が悪くなっちゃう・・、
またメトロに乗るの?!
私が小型犬だからといって、
リュックにいれるのは勘弁して〜苦しい〜、ぜーぜー」

犬の本音(?!)というより、私がパリの犬だったらこう思うに違いない。
う〜ん、パリの犬が汚いと思うのは感覚の違いか。
でも、正直に言うと、本当に、強烈に汚くて臭い犬を時々見かける。
もっとお風呂にいれてあげて欲しいな〜なんて他の人の犬ながら思ってしまう。

臭いといえば、犬用の香水のコマーシャルを見たことがある。
フランスは、香水産業が発達しているとは言え、犬用もあるなんてびっくり!!
これには間違いなく犬も迷惑しているだろう。
香水のついでに言うと、ペットショップには、
犬用のアクセサリー、宝石(本物?)入りの首輪やら、服など、
鍵つきのガラスケースに丁寧に入れて飾られてある。
そうとうな値段がするに違いない。
まあ、こういうのを利用するのは一部の人達なんだろうけど、
犬もアクセサリー、ファッションの一部なのかと思うと、
ちょっとかわいそうな気がするな〜。

飛行機や、電車にもなんなく乗れて、一緒に泊まれるホテルがあれば、
犬は、家で一人ぼっちでお留守番より、
飼い主と一緒に旅行することを、喜んでいるかもしれない。
でも、飼い主と一緒だからって、
どこに行くのも幸せってわけじゃないだろうな、と思う。
スーパーの入り口につながれて、ヒーヒー、キャンキャン、ワンワン、
大型ホームセンターで嫌がって座り込む犬をずるずる引きずってたマダム・・、
こんなところに犬を連れてくるほうが悪いぞ、うんうん。
犬はホームセンターやスーパーになんか興味ないんだから。

それに、メトロの中でリュックやかばんに突っ込まれて、
首だけ出している小型犬を見た時は犬が気の毒になった。
犬をどこでも連れて行けるということは、
飼い主もよく考えて行動しないといけないということかぁ・・。
犬の気持ちも考えつつ、周りの人への迷惑なども。
パリを訪れたことがある人なら、たぶん思ったであろう、
「パリの街は犬のう○ちで汚い!!」って・・。
一応、市役所は犬のう○ちを取るように呼びかけている。
Je ramasse
「取ります」

という短くてわかりやすい言葉とともに、
犬と、袋を持った飼い主の絵の描いた看板が、近所にもある。
しかし、効果のほどはどうだろう?
私が見たところ、はっきり言ってみんな無視じゃないかな。
人目なんか気にせずに、平気でさせて、そのままそ知らぬ顔で行ってしまう、
あの〜おとしもの〜と嫌味を言いたくなるが、怖いので言えない。(汗)
パリ郊外にある、あの、画家のゴッホが自殺を図ったといわれている、
小さなお城の裏にあるお庭でさえも、犬を散歩させに来てる人がいた。
その時はさすがの私も怒りがこみ上げてきた。
美しい公園も犬、犬、犬、それに比例しての落し物。
いや、犬に罪はない。
それにもう一度言おう、私は犬が好きだ。
責めるべきは犬ではなく、
落し物の後始末をしない飼い主が悪いのだ。
一度だけ、たった一度だけ、ちゃんと取っているマダムを見たことがある。
思わず、心の中で拍手!!
落し物を思いっきりふんずけて、Merde(糞) !! なんて、しゃれにもならん・・。
足を地面にこすりつけながら、
ずるずるしている不機嫌なフランス人によく出くわす。
それがまた汚い。(汚い話ですみません)
それでも、踏んだほうが悪いとなるのが、フランスか。

パリは、どんなことでもそうだけど、自由な感じがする。
もちろん、犬に関しても。
愛犬といつも一緒にいたいと思う、飼い主の気持ちが尊重されているのだろう。
犬の落し物さえ取ってくれたら、私は文句ないな。
フランスでは、アニマル・ド・コンパ二 (animal de compagnie) と言われている。
英語風にコンパニオン・アニマルと言えばおわかりだろうか。
そう、家族の一員、友達、仲間としての、動物。
家族の一員のとして、同居している、といった感じだろうか。
この感じは、動物をかわいがっている(た)人なら、
わかっていただけるのではないかと思う。

飼い主のマナー以外は、
アニマル・ド・コンパ二に対して、自由なフランスが好きだけど、
やはり影の部分もある。
ヴァカンスに行くのに、飼っている動物が
邪魔になって捨ててしまう人が多いと、フランス人が言っていた。
フランスだけでなく、
どこの国でもアニマル・ド・コンパ二を捨てる人はいるんだろうけど、
理由が理由なだけに、ショックだった。
もちろん、どんな理由があっても一度家族に迎え入れた動物を捨てるのは
絶対良くないことだと思う!
ヴァカンスの国、フランスにはベビー・シッターならぬ、
アニマル・シッターというのがある。
ネットで検索すれば、出るわ、出るわ。
アニマル・シッターと言えば、もうお分かりかと思うが、
飼い主が旅行に動物を連れて行けない時や、
なんらかなの理由で一時的に面倒が見れない時、
代わりに面倒を見てくれる人のことを言う。
個人でアルバイト的にやっている人、退職してからやっている人、
それを扱う機関もある。
話は少しそれるが、旅行中に空き巣が入らないように、
家の管理をしてくれたり、庭に水をやりに来てくれる、
そんなサービスもある。(もちろん有料です^^;)
もちろん、いずれもきちんと、まじめな人(機関)かどうか、依頼する時に、
自分達の目で厳しくチェックしなければならないのは、言うまでもない。
実はうちのうさぎも、以前、私達が旅行中に、
アニマル・シッターさんにお世話になったことがあり、大変助かった。
さすが、ヴァカンスの国!!
気が利いてる〜!なんて、この時はフランスを絶賛してしまった(←単純・・・)

アニマル・ド・コンパ二の話と言えば、その権利の問題、
もっと発展させると、
ファッションとしての毛皮を取るためだけに殺される狐やテンやミンク、
人間に食べられるためだけに生まれてくる、家畜、
動物実験など、動物に関する問題はたくさんある。
前に、フランスのテレビ番組でも見たことがある。
番組自体は、あまりうまくできておらず、おもしろいとは思わなかったけど、
実験されるうさぎの様子や、犬を虐待している人
(顔にはもちろんモザイクがかけられていた)を隠し撮りした映像が流れたり、
チンパンジーを飼っていたけど、世話をしきれなくて、
結果的に動物園に引き取ってもらった人が、
実際に出演して体験談を語ったりと、少々ショッキングな内容でもあった。
テレビの影響力は大きいから、
私はこういう番組がたまに放送されてもいいのではないかと思う。
あまりにも無残な映像はもちろん避けなければいけないけど、
私達に考える機会を与えてくれるのではないかな。
ふと、うちのうさぎは幸せかな〜と考えながら、彼を見た。
おやおや、私がこれを書いている机の下で、
ごろんと横になって、目を細めて、うとうとしている。
気持ち良さそう、幸せそう、飼い主が一番ほっとする瞬間だ。
こういう環境をいつも与えてあげるのが、
飼い主としての勤めなのかな。

Satoko


< 前のエッセイへ | 次のエッセイへ >
スタートへ | 最新へ



Back Cafe
全ての文章、写真等の著作権は各作者にあります。
無断転載・複製、著作権法に反する引用・使用等を固く禁止します。
 

Page Top